sansouka  大好きな歌
  

小さな日記

1 小さな日記に 綴られた
  小さな過去の ことでした
  私と彼との 過去でした
  忘れたはずの 過去でした

2 ちょっぴりすねて 横向いて
  黙ったままで いつまでも
  やがては笑って 仲直り
  そんなかわいい 恋でした

3 山に初雪 降る頃に
  帰らぬ人と なった彼
  二度と笑わぬ 彼の顔
  二度と聞こえぬ 彼の声

4 小さな日記に 綴られた
  小さな過去の ことでした
  二度と返らぬ 恋でした
  忘れたはずの 恋でした


北 穂 小 唄

1 登ろ登ろうよ北穂の山によチョイセ  横尾谷からネエチョイトサ涸沢づたい
  雪渓渡ってガレ場を越せば  前穂ながめる花の道
  ヤーレサッテモ サッテモネ ヤーレヨイヤサー ヨイヨイヨイ

2 腰のハンマーは伊達には持たぬよ チョイセザイルさばいてネエチョイトサ
  チムニー抜けりゃ 霧にかすんだ あのクラックに 歌えハーケン高らかに
  ヤーレサッテモ サッテモネ ヤーレヨイヤサー ヨイヨイヨイ

3 粋なニッカにナーゲル履いてよチョイセ ピッケル小脇にネエチョイトサ
  ザイルは肩に明日は第一か クラック尾根か山の男の晴れ姿
  ヤーレサッテモ サッテモネ ヤーレヨイヤサー ヨイヨイヨイ

4 笠にあなたの夕日が落ちてよチョイセ 飛騨の夜風がネエチョイトサ
  肌衣に寒い思い新たなあの岩尾根に 積んだケルンが懐かしい
  ヤーレサッテモ サッテモネ ヤーレヨイヤサー ヨイヨイヨイ

5 小屋にともったランプの火影よチョイセ 夜は楽しやネエチョイトサ
  こたつのまどい明日はいずこか 北穂の池か お花畑は花盛り
  ヤーレサッテモ サッテモネ ヤーレヨイヤサー ヨイヨイヨイ



時には昔の話をしようか

1 時には昔の話をしようか
  通いなれた 馴染みのあの店
  マロニエの並木が 窓辺に見えてた
  コーヒーを一杯で一日
  見えない明日を むやみに探して
  誰もが希望を託した
  揺れていた時代の 熱い風に吹かれて
  体中で瞬間を感じた そうだね

2 道端で眠ったこともあったね
  どこにも行けない みんなで
  お金は無くても なんとか生きてた
  貧しさが明日を運んだ
  小さな下宿屋に いく人も押しかけ
  朝まで騒いで眠った
  嵐のように毎日が 燃えていた
  息が切れるまで走った そうだね

3 一枚残った写真をご覧よ
  ひげづらの男は 君だね
  どこに居るのか 今ではわからない
  友達も何人かいるけど
  あの日の全てが 空しいものだと
  それは誰にも言えない
  今でも同じように 見果てぬ夢を描いて
  走り続けているよね どこかで


あざみの歌

1 山には山の 愁いあり
  海には海の 悲しみや
  ましてこころの 花ぞのに
  咲きしあざみの 花ならば

2 高嶺の百合の それよりも
  秘めたる夢を ひとすじに
  くれない燃ゆる その姿
  あざみに深き わが想い

3 いとしき花よ 汝はあざみ
  こころの花よ 汝はあざみ
  さだめの 径は はてなくも
  香れよせめて わが胸に



坊がつる讃歌

1. 人みな花に 酔うときも
  残雪恋し 山に入り
  涙を流す 山男
  雪解(ゆきげ)の水に 春を知る

2.ミヤマキリシマ 咲き誇り
  山くれないに 大船(たいせん)の
  峰を仰ぎて 山男
  花の情を 知る者ぞ

3.四面山なる 坊がつる
  夏はキャンプの 火を囲み
  夜空を仰ぐ 山男
  無我を悟るは この時ぞ

4.出湯の窓に 夜霧来て
  せせらぎに寝る 山宿に
  一夜を憩う 山男
  星を仰ぎて 明日を待つ

5.石楠花谷の 三俣(みまた)山
  花を散らしつ 篠分けて
  湯沢に下る 山男
  メランコリーを 知るや君

6.深山紅葉(みやまもみじ)に 初時雨
  暮雨滝(くらぞめたき)の 水音を
  佇み聞くは 山男
  もののあわれを 知る頃ぞ

7.町の乙女等 思いつつ
  尾根の処女雪 蹴立てつつ
  久住に立つや 山男
  浩然(こうぜん)の気は 言いがたし

8.白銀の峰 思いつつ
  今宵湯宿に 身を寄せつ
  斗志(とし)に燃ゆる 山男
  夢に九重の 雪を蹴る

9.三俣の尾根に 霧飛びて
  平治(ひじ)に厚き 雲は来ぬ
  峰を仰ぎて 山男
  今草原の 草に伏す



雲雀賛歌

春、お花畑に 舞う小鳥
  石楠花の森 春の霧
  心を遊ばす 山佳人
  瞳は彼方を 見つめるか

夏、雲沸く峰を 歩きつつ
  行くあても無き 夏の尾根
  心を抑える 山佳人
  君はいずこに 向かうのか

秋、紅葉の谷は 燃え立ちて
  ランプの宿に 憩いつつ
  心まどろむ 山佳人
  夢は雪野を 彷徨うか

冬、温かき里を 後にして
  氷雪厳しい 峰に立ち
  憂いを秘めし 山佳人
  雪の褥に 果つるとも



いつか或る日

  1.いつか或る日 山で死んだら
    古い山の友よ 伝えてくれ

  2.母親には 安らかだったと
    男らしく死んだと 父親には

  3.伝えてくれ いとしい妻に
    俺が帰らなくとも 生きて行けと

  4.息子たちに 俺の踏跡が
    故郷の岩山に 残っていると

  5.友よ山に 小さなケルンを
    積んで墓にしてくれピッケル立てて

  6.俺のケルン 美しいフェイスに
    朝の陽が輝く 広いテラス

  7.友に贈る 俺のハンマー
    ピトンの歌う声を 聞かせてくれ